吉田晴乃。 吉田晴乃さん死去の前日、人生最後になった渾身の演説全文 (1/3):日経ARIA

怖いのは、挑戦している証拠。あなた自身の価値に気づいて!/吉田晴乃さん

吉田晴乃

2015年5月13日、ザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)で、英国の最大手ICTプロバイダー「BTグループ」の日本進出30周年を記念するイベントが催された。 日本経済新聞社 デジタルビジネス局、ポリコムジャパン株式会社の協力により実現したこのイベント。 日本市場を牽引するビジネスリーダーが会食をともにしながら親睦を深めあう場でもあり、会場を見渡せば、女性参加者が約半数を占めることに気づく。 挨拶のために登壇したBTジャパンの代表取締役社長も女性である。 駐日英国大使Tim Hitchens氏による来賓挨拶の後は、テレビ会議システムを通じ、ロンドンから3名の女性エグゼクティブによる講演が届けられた。 彼女たちが語る「ダイバーシティ」とは何か。 これからの社会に何をもたらしていくのか。 そこに、今後の日本企業のあり方を探る。 やっぱり半分が女性だと、会場が華やかですね。 こうした場にふさわしいテーマ「ダイバーシティ」について、本日は素晴らしいゲストを呼んで話を聞いていきたいと考えています。 ダイバーシティはイノベーションを生みだします。 イノベーションがテクノロジーを生み、テクノロジーが人々をエンパワーする。 そしてエンパワーされた人々が、さらにイノベーションを生む。 こういったポジティブなサイクルに入ったとき、企業や国や市場に、またオリンピックなどの大きなイベントにどのようなベネフィットをもたらすか。 それを中心にお話ししたいと思います。 BTジャパンは今年で30周年ですが、BT自体は170年の歴史を持つ世界最古の電話会社です。 グラハム・ベルが電話機を発明し、最初に商用化したのがBritish Telecom、つまりBTだったのです。 それから長いテクノロジーの変遷を経て、今ではICTプロバイダーと呼ばれるようになりました。 データ・音声の通信網の提供、データセンター、クラウド、ユニファイドコミュニケーション、サイバーセキュリティと、ICTの重要なコアになるサービスを、世界192ヵ国・約9万人の体制で提供しています。 多様性を求める意味とは 私は2012年に現職に就きました。 東京オリンピック生まれの私が、干支がちょうど4週した年に、まさにロンドンオリンピックで盛り上がるBTで日本法人初の女性社長のポジションをいただきました。 就任前の最終インタビューは2011年の年末でした。 ビデオ会議システムの向こうのイギリス本社の人事のトップはイギリス人の男性でした。 アイスブレークをしないといけないと思い、最初にこう聞いてしまいました。 「わたくし女性でここ日本なんですけど本気ですか?」 そのときの彼のニコリともしない返答が印象的でした。 「BTには次世代のリーダー像とKPIが明確にあり、あなたがそのKPIを持っていた。 たまたま、あなたが女性だったということです。 問題ありません」。 アイスブレークのつもりがアイスブレークになりませんでした(笑)。 企業側に確固たるヴィジョンがあるとき、まるでパズルのように、それをつくり上げる必要なリソースをちゃんと見つけることができるのではないでしょうか。 近年のハイライトはと言うと、やはりロンドンオリンピックでしょう。 一社にすべてのICTのインフラストラクチャーが任されたのは、夏期オリンピックでは史上初と言われています。 この大会では世界中から社員を動員しましたが、私たちが真っ先に始めたのは、「できる限り多様な人材を集めること」でした。 国籍も超えて、ジェンダーも超えて、ハンディキャップの社員も採用し、最終的に1,000人ほどの人材を集めました。 なかなか初動としてそれがでてくることはないですよね。 なぜ最初にそれを始めたのか。 私は当時のプロジェクトマネージャーに聞きました。 彼には明確なビジョンがありました。 「この世界最大級の祭典にICTを提供するからには、さまざまな人が世界中のどんなテクノロジーを持ちこんだとしても、柔軟に連携し、みんなが快適に使えるようにしなくてはならない。 そのためには、ありとあらゆる視点、考え方、技術のバックグラウンドを集約しなければ」 それが、彼の答えでした。 そして4週間の大会期間中、私たちは多様な人材を力に、求められる以上のサービスを提供し続けることができたのです。 テクノロジーもイノベーションも人がつくります。 ダイバーシティ&インクルージョンが企業文化としてあると、このような発想が出てくるのだと思います。 多彩なベストがひとつになるとき 2015年の今、全世界で150億台の通信機器を介し、約1,000エクサバイトという天文学的な量のデータ量がやりとりされています。 もはや、ICTがなければ電気も水道も使えない。 重要な社会のライフラインとしての役割を担っています。 そのプロバイダーとして、私たちには、今やらなければならないことがあります。 世界最大級と言われるBTグループのネットワーク。 特にクラウドコンタクトセンターは世界最大級のカバレッジを誇り、その重要性が高いエアラインインダストリーにおいてマジョリティのシェアを持たせていただいています。 世界の約50拠点にデータセンターを配置し、ここを中心にクラウドデータセンターを開始。 14拠点のセキュリティオペレーションセンターが24時間フル稼動することで、激化するサイバーアタックにも揺るがないセキュアなネットワークを築いています。 ロンドンオリンピック会期中の4週間で億単位、最悪時には1秒間12,000という世界史上最大のセキュリティアタックを受けても、支障なくICTサービスを提供し続けることができました。 このセキュアドネットワークをベースに、私たちが今年以降フォーカスしていくもの。 それは、Cloud of Clouds。 世界のトップテクノロジーを誇るITリーダーたちのクラウドを有機的につなぐ試みです。 現在、世界には素晴らしいテクノロジーが散在しています。 その中のすべての良いもの、ベスト・オブ・ベストを集め、BTならではのセキュアなネットワーク環境に組みこむ。 セキュリティ、マネジメント、ケーブルレイヤーからアプリケーションレイヤーまで、ひとつのスタンダードの上で動く仕組みをつくりだし、全世界に提供していく。 ユーザー環境、お客様のデータセンタ環境とそのクラウド、BTのデータセンターとそこで展開されるクラウド、ボイス、SIP,コンタクトセンター、コラボレーション、会議サービスといったユニファイド・コミュニケーションクラウド、製薬業界向けのパブリッククラウド、あらゆるアプリケーションクラウド、世界の名だたるサードパーティのクラウドもつなげています。 BTにつながっていただけばビジネスに必要なたいていのICTがワンストップショッピング。 これが実現すれば、完全にWIN-WINのデジタルなエコシステムが生まれます。 世界のトップクラスのトラフィックが使える、ネットワークが共有できる。 ここに私は、日本のICTパートナーのテクノロジーも組みこみたいのです。 ちょうどターミナル駅に複数の路線が乗り入れるように、データエクスチェンジが闊達に行われ、切磋琢磨によりイノベーションもアップグレードしていく。 この多種多様なベスト・オブ・ベストをひとつに統合できるのは、誰よりも長い歴史の中でテクノロジーの変遷を経験し、ダイバーシティに富んだ企業カルチャーを育んできたBTだからこそなのです。 最高の音声品質、周りのノイズも除去されます。 それがあれば、例えば外出先からや在宅勤務の人でも会議に参加できますよね。 これもダイバーシティを大切にするBTならではのサービスだと思います。 さて、このダイバーシティが、人々の働き方やこれからの社会をどう変えていくか。 素敵な3人の女性からお話をうかがってみましょう。

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追悼:吉田晴乃さんが残した「女性活躍」

吉田晴乃

BTジャパンの社長として業績を上げ、同時に経団連初の女性役員として「働く女性の地位向上活動」を積極的に進めてきた吉田晴乃氏。 日本と世界の通信業界でリーダーシップを発揮し続けてきたキャリアのなかで培われたリーダーシップ論は、説得力を持って働く女性の心に響くだろう。 リーダーに必要なマインドセットとともに、経営者の条件についても話を聞いた。 吉田 ええ、もう転機だらけです。 もちろん「転職すること」は大きな転機ですが、私は転機とは「自分から迎えるもの」だと考えています。 「ポジションが上がって転機がやって来ました」ではなく、自分のメンタリティのステージが上がっていくと、不思議と環境が変わり、結果として仕事が変わり、それが転機になるというか。 例えば私にとって、「9. 11」(2001年のアメリカ同時多発テロ事件)は大きな転機でしたね。 吉田晴乃 (よしだ・はるの) BTジャパン会長 経団連審議員会副議長 慶応義塾大学卒業。 90年モトローラジャパン入社、その後NTTアメリカ、NTTコミュニケーションズなどでトップセールスとして活躍。 日米で数々の営業成績を塗り替えた。 2012年に英通信大手BTジャパン社長に就任。 2018年現職。 2015年に経団連では史上初の女性役員として審議員会副議長に就任。 また、女性の活躍推進委員長としても積極的な活動を行う。 一女を育て上げたシングルマザーでもある。 吉田 あの瞬間は今でも忘れられません。 当時、NYにいた私は目の前で飛行機がビルにドーンと突っ込んだのを見ました。 当時は通信会社にいましたから、お客様や友だちの多くがあのビルにいたので「とにかく故障対応しなきゃ」って、気がついたらあのビルに向かってダッシュしていました。 現場では「携帯電話は使わないでください!」「負傷者がガレキの下で携帯電話を使って助けを呼んでいるので、通信帯域をあけてください!」という大声とサイレンの音が入り乱れていてパニック状態。 ものすごい砂煙のなか、みんな混乱して、大きな声で叫んでいました。 「いったい私は何をやるべきなんだろう」。 その時私は自分のミッションを感じさせられた気がしたのです。 この通信さえつながっていれば、人の命も救うことができる。 自分はライフライン提供者として、社会に根付いて市場のためになることをしていかなきゃいけないという使命感……とにかく衝撃を受けました。 この事件をきっかけに間違いなくメンタリティが上がり、その後のキャリアの転機に結びついたと確信しています。 吉田 その通り。 リーダーを目指すなら、なおさら自分の考え方のステージを上げていくことが大事です。 自分のやっていることが、どのように人々の役に立っているのかを深く考え抜く。 自分のステージが上がると、環境のステージが間違いなく変化していきます。 その過程で困難に出合ったら、自分のなかに免疫がなかったという証拠だから、自分を強化していかなくてはいけません。 ステージが上がれば上がるほど、周りには悪い菌も多くなる。 もう菌だらけですよ(笑)。 だからそれに打ち克つ強い体力をつけて抗体をつくらなくてはいけません。 純粋培養では絶対ダメです。 最近、直近の部下に、聖書の一節にある「蛇のように賢く、鳩のように素直であれ」という言葉を送りました。 「あなたは本当にいい人だけど、世の中は理不尽なことばかりで、そのなかでもリーダーは強くなくてはいけない。 私があなたに言ってあげられるのはこの言葉ぐらいしかないけれど、これは私がいつも自分にも言い聞かせている言葉です」と。 つまり、人間というのは本当に弱くて、自分の側近とかチームとか上司とか周りにいる近い人間ほどを信じたくなるんです。 なぜってそれがラクだから。 自分の弱さがそうさせるのです。 「この瞬間、この環境、このプロジェクトのなかであなたを信じます」というのは「あり」だけど、「あなたは絶対大丈夫」っていうのは、あり得ない。 そんなことをいうトップは相当甘い経営者だと思います。 とはいえ、私も過去にはそうやってきたこともありました。 「あの人だけは大丈夫」と。 吉田 そうです。 自分の弱さの裏返しであり、同時に「人の弱さが見えてない」ということ。 人間というのはそんなに強くないものです。 そう自覚すれば、いろんなリスクが見えてくるんですね。 だから「あなたなら100%大丈夫」と言う人は、私は経営者としてはダメだと思います。 どうやったらリスクが見えるかというと、それが「多様性」にもあてはまることなのですが、自分にいろいろな面を持っていることが必要だと思います。 弱い自分、醜い自分、ずるい自分、もちろん良い自分も、強い自分も知っている、そういったアンテナが立っていると、他人の様々な面も見えてくる。 良い面も、悪い面も。 そこがとても大事です。 なぜならばインシデントというのは、コトではなく全部「人」が原因で起こるのだから。 深い言葉ですね。 吉田 なぜなら、この世の中で、人が関わらないことってありますか? ロボットだって人が作る。 どんなコンピューターも人が作るでしょ。 「インシデントは人」なんです。 現在BTは世界170カ国、約10万人の従業員がいるのですが、多様な環境の中で、多様な人材が、多様な信念と価値観を持って共存しています。 これがまとまるのはたった1つのスペシフィックな目的意識があるから。 それは「BTという企業体のなかで利益を上げましょう」ということ。 それだけでつながっているのだから、成功させるためには、お互いの多様なバックグラウンドを理解しなくてはいけないのです。 「人」を理解することが大切なんです。

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吉田晴乃さん死去の前日、人生最後になった渾身の演説全文 (1/3):日経ARIA

吉田晴乃

20190715 熊井泰明、大砂雅子 追悼:吉田晴乃さんが残した「女性活躍」 吉田晴乃さんが 6月 30日に心不全で亡くなりました( 55歳)。 亡くなる前日の G20大阪サミット特別イベントでは、渾身の演説を担当された(全文は日経 ARIAで公開されています)とのことですから、全く突然の訃報としか言いようがありません。 あまりご存知のない方のため、吉田さんについて少しご紹介させて頂きます。 BTジャパンCEO、初の女性経団連審議員会副議長、規制改革推進会議委員などの重責を歴任し、 2017年にはフォーチュン誌が選ぶ World's Greatest Leaders 50の一人に日本人としてただ一人選出されたこともあります。 経営者としては、いろいろな事情や状況を抱えた社員が活躍できる会社を、という主張をされて来たことでも知られています。 こう書くと、何か順風満帆で来た方のように見えますが、大学卒業のスタート時点から大病やいろいろな問題に直面し、それを乗り越えて圧倒的なキャリアを築いてきた方です。 モトローラ日本法人、カナダの通信会社、 NNTコミュニケーションズなどでキャリアを磨きました。 カナダ人との離婚後にはシングルマザーとして子育てにも邁進し、「娘世代が私たち世代と同じ苦労をしなくて済むように女性活躍を進めたい」という視点から、女性活躍の場を広げることにも力を注いでこられました。 「 100%の力を、母親、CEO、経団連役員、政府委員の 4等分すれば良いかというと、それぞれに 100%が求められ、これまでの 400%の力を発揮しなければなりません」と言い切る方ですから、もしかしたら激務で燃え尽きてしまったのかも知れません。 一度だけ同席したことがありますが、隙のないスーツに高いヒールの靴で会議室に登場すると、出席者が思わず起立して迎えた光景を覚えています。 圧倒的かつ不思議な存在感を持つ方でもありました。 (熊井) 写真で拝見しただけですが、日本人離れした美貌と威圧感のあるお姿を見ると、この日本社会で女性がトップに上り詰めるには、このような方でないと無理だと感じさせるものがありました。 次に続く世代は、普通の女性たちにも男性と同様のチャンスがあってほしいものです。 たぶん、吉田さんもそれを望んでいたことでしょう。 (大砂) まだまだリーダーとして活躍して頂きたかった方だけに、突然の訃報は残念としか言いようがありません。 「花粉( Le Pollen)」(作詞 ピエール・バルー、作曲 高橋幸弘)という曲をご存知の方はほとんどおられないでしょう。 「私たちは過去の人々から花粉を受け継いで花を咲かせ、次の人々に残していく」という歌なのですが、昨年から訃報が相次ぐ中でなかなか染みる内容になっています。 私たちは吉田さんの残した「花粉」を花開かせ、次世代に送る義務があると思います。 心からご冥福をお祈りいたします。

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