映画 京都。 上質なこだわりに感嘆。映画がきっと好きになる京都の映画館7選

ずぶ濡れになって暑さを吹っ飛ばせ!京都・映画村で「映画村ひえひえ王国 紅白対..(東映太秦映画村 プレスリリース)

映画 京都

Introduction イントロダクション 『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『花とアリス』と数々の名作を世に送り出してきた映画監督・岩井俊二。 20年以上ものキャリアの中で、巧みにその時代を切り取りながら様々な愛の形を表現し、いずれも熱狂的なファンを生み出してきた岩井が、初めて出身地である宮城を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く『ラストレター』。 名匠・岩井俊二のもとに、松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、神木隆之介、福山雅治ら超豪華キャストが一堂に集結。 中山美穂、豊川悦司も参加し、名作『Love Letter』を感じさせる世界観でありながら、全く新しいエンタテインメントを作り出した。 Story ストーリー 裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。 裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。 未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。 そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。 勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。 裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。 その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎(回想・神木隆之介)と未咲(回想・広瀬すず)、そして裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。 このお仕事をしていて、新しい方と出会うことも面白いことではありますが、 一度ご一緒した方に声をかけてもらえると 「あっ、嫌われてはいなかったのかな」とも思ったりします 笑。 だいぶ大人になって岩井さんとまたお仕事できる楽しみが 今回の役にはあるのかなと思っています。 この作品には切ない気持ちみたいなものが溢れていますが、 決して岩井さんがそれだけを思っているのではないのかも、とも思います。 緊張したまま終わるのかなって思いますが、 それでもいいかなって思っています(笑)。 Comment いつかまた豊川さんとの共演はもちろんのこと、 岩井監督作品に出演できたらいいなと思っていたので、 今回声をかけていただき、とても嬉しかったです。 岩井監督は、普段とてもほんわかした感じの方ですが、 現場に入るとスイッチが入り、少年のようにまっすぐで、 独特の世界観があり、現場にいると異次元にいるような感覚になります。 ですので、撮影現場はとても楽しいです。 岩井監督とは、特に事前に役柄について話をしたりすることはないのですが、 現場でのやりとりの中で役を作り上げていく感じです。 豊川さんとは、今回共演シーンは少ないのですが、 それでも今までの二人の歴史があるので、 短い共演シーンの中でも積み重ねてきた何かが スクリーンには映っているのではないかと思います。 Comment 岩井監督の作品に初めて参加させて頂くことになりました。 過去作品も拝見しており、 人間味溢れる暖かい作品が多い印象なので、 今回演じる乙坂鏡史郎として、 岩井監督が撮られる世界観の中で精一杯生きたいと思います。 そして、僕にとって憧れでもある福山雅治さん。 今回は福山さんの学生時代を演じさせて頂くので、 嬉しさとプレッシャーでいっぱいですが、 先輩の胸をお借りするつもりで丁寧に演じたいと思います。 広瀬すずさんは、以前ドラマでご一緒させて頂きましたが、 また共演することが出来て嬉しいです。 素敵な共演者の皆さんに囲まれて芝居が出来る喜びを噛みしめながら、 日々撮影に励みたいと思います。 1963年1月24日、宮城県仙台市生まれ。 88年、桑田佳祐「いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)」PVをディレクション、プロとしてスタート。 91年、深夜ドラマ「見知らぬ我が子」でドラマ初演出。 93年、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」がテレビ作品にもかかわらず日本映画監督協会新人賞に輝く。 94年、中篇『undo』で映画監督デビュー。 95年、初長編『Love Letter』は社会現象と化し、異例のロングランヒット。 96年、念願&渾身の大作『スワロウテイル』完成、公開。 以降、ショートムービー、ドキュメンタリー、アメリカ映画、アニメーションと、縦横無尽にエリアを広げ、いずれの作品でも唯一無二の「岩井美学」(1990年代、深夜ドラマで一大ブームを巻き起こした際、フジテレビが提唱したキャッチコピー)を証明している。 Comment かつて「Love Letter」という映画を作りましたが、 当時は手紙のやりとりのあった時代でした。 あれから通信手段は激変し、 SNSでやり取りできてしまうこの時代にあって、 手紙を使った物語は現代においては不可能だと思っていましたが、 ある日それを可能にするアイディアを思いついてしまったところから この物語の構想がスタートしました。 ある夏休みの間に起きた世代を超えた手紙物語です。 今回初めてロケーションを故郷宮城に設定しました。 劇映画としては初の試みです。 今回は川村元気プロデューサーとのお仕事ということで このユニットのコラボを楽しもうと思っています。 ご一緒するのが初めての俳優さんもいるし 以前お仕事をしたことのある俳優さんもいます。 プロの俳優さんもいればそうでない方もいます。 そこからどういう化学反応が起きるか今から楽しみです。 Opening1 Mask• Opening2 Mask• Reply Reunion• Send And Return1• Letters• Send And Return2• Recollection• Mask• Library• Original Frog Song• Ato• Girl Cousin1• Old Classroom• Recollection Slow• Girl Cousin2• Reply End• カエルノウタ movie ver. 大げさじゃなく〝岩井俊二前、岩井俊二後〟というのはあると思います」そう語るのは本作の企画・プロデュースの川村元気プロデューサー(以下、川村P)。 もともと監督の(実写版)『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の大ファンだった川村Pは、共に岩井ファンであり友人でもあるRADWIMPSの野田洋次郎が岩井監督と共通の知人だったことから、その交流は10年以上前に遡る。 野田以外にも新海誠監督、大根仁監督など岩井ファンを公言するクリエイターとの仕事も多く、「岩井俊二ファンが近い年代で横並びで映画を作っていた感覚」の中、ついにアニメ版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で初タッグを組むことに。 『打ち上げ花火~』の製作段階から、本作『ラストレター』の企画を監督と共に詰めていた川村Pの中で、「岩井監督のベスト盤的な作品にしよう」という思いが強まっていった。 「ある種の〝岩井オマージュ〟というか、これまでの岩井作品のモチーフがたくさん詰まった作品ですね。 僕自身、岩井俊二という監督がどうやって映画を作っているのかということにすごく興味があった。 それを知るには一緒に1本映画を作らせてもらうのが一番早いと思ったんです」 三角形の文通という発明 本作のタイトルを聞いてあの名作『Love Letter』(95)を想起する人も多いだろう。 当初から『Love Letter』のアンサームービー的な要素は意識しつつ、「最初にあがってきた脚本は今とは全く違うものだった」と川村P。 「簡潔に言えばもっと重たいお話でした。 僕はとても好きでしたけどね(笑)。 それとこれは岩井作品の特徴とも言えますが、前半と後半で全く違う物語でもあった。 ご本人もおっしゃっていましたが、プリンだと思っていたらイクラだったくらいの違い(笑)。 でも今回はあえてプリンならプリンで統一しましょうと。 監督との共通認識として、今回はエンタテインメントを作ろうというものがあったので」 そこで監督は物語そのものをガラッと改変。 「『Love Letter』や『スワロウテイル』(96)に繋がるような岩井監督らしい、けれど非常に王道なエンタテインメントになっているなと感じさせる脚本でした。 全体としては非常にユニークな設計で、かつアイディアの発明がある」その〝アイディアの発明〟こそが、物語のキモでもある三角形の文通だ。 互いが間違った相手に手紙を送り続けているにも関わらず、文通が奇妙に成立してしまう面白さ。 SNS全盛の現代において手紙をキーアイテムにしたのも興味深い。 「そもそものきっかけは昔に残された1通の手紙。 過去の記憶と手紙という古いメディアが、同時に現代に立ち上がってくる構造も秀逸だと思います」(川村P) 豪華キャスティングが実現 撮影のギリギリまで続いた脚本作業と並行し、2016年末から本格的なキャスティングを開始。 主演の松たか子は『四月物語』(98)以来、久々の岩井組。 〝岩井作品のベスト盤〟には絶対欠かせない女優として、真っ先に名前が挙がる。 その実力は誰もが認めるところだが「シリアスはもちろん、コミカルなお芝居にも長けている女優さんであることも今回はとても大事でした」と水野昌プロデューサー(以下、水野P)は語る。 「裕里という役はシリアスに寄り過ぎると危険なキャラクター。 鏡史郎のことを何十年もジメジメ想い続けていたとなると少し怖いですし、夫の宗二郎に携帯を壊されたりするシーンも明るく演じてもらわないと〝え?この夫婦大丈夫?〟と思われかねないので」 一方で岩井組に初参戦となるキャスト陣にも積極的にオファー。 声優として『打ち上げ花火~』に出演していた広瀬すず、新海誠監督の『君の名は。 』で声優を務めた神木隆之介、そしてキャスティング当時はほぼ無名だった森七菜は後に同じく新海監督の『天気の子』で一躍その名を知られることになるが、本作では大抜擢に他ならない。 「広瀬さん、神木さんは共に監督から一度仕事をしてみたいという意向がありました。 森さんに関しては140人ほどのオーディションから選びましたが、書類やビデオの段階から監督が〝断トツで彼女がいい〟とおっしゃっていましたね。 実際会ってみると、満場一致で決まりました」(川村P) 監督としても活躍する庵野秀明は、自身の監督作『式日』(00)で岩井を主演俳優として起用した過去があるのは周知の事実。 「庵野さんのキャスティングは岩井監督でないと思いつかないし、実現もしなかったでしょう。 松さんと庵野さんのシーンは完全にコメディですし、改めて岩井監督は〝センスオブユーモア〟の人なんだなと思います」(川村P)ちなみに宗二郎は当初医者の設定だったが、庵野の出演が決まってから岩井監督自ら漫画家に変更したのだとか。 小室等、水越けいこという大ベテランミュージシャンを俳優として起用したのも、もちろん監督のアイディア。 演技初挑戦となった水越に、庵野が親身なアドバイスをしていたという微笑ましいエピソードも。 意外にも難航したのが、現在の鏡史郎役。 「誰にお願いしようかと悩んでいる時に、監督がふっと福山雅治さんのお名前を挙げたんです。 お仕事をしたことはなかったのですが以前から面識はあったようで、そのイメージがあったのかもしれません。 ただ鏡史郎というかつては輝いていたけど、今はくすぶっているというキャラクターを演じるにあたって、今までの福山さんのイメージとは違う一面を見たいと思ってのキャスティングでしたが、監督のイメージ通り今までに見たことのない新しい福山さんを見ることができました。 」(水野P)そして『Love Letter』ファンは衝撃を受けること必至の中山美穂、豊川悦司という2人がまさかの役どころで出演。 「監督も〝出演してくれるか分からない〟と半ばあきらめモードだったんですが、快諾していただけて本当にありがたかったです」(田井えみラインプロデューサー、以下田井LP)。 スタッフも岩井組オールスターズといったメンバーが集結。 撮影監督は『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)の神戸千木。 かつて岩井監督と『Love Letter』をはじめ数多くの作品でタッグを組んできた名カメラマン=篠田昇に師事していた撮影カメラマンでもある。 他にも『四月物語』で美術を担当していた都築雄二、監督の盟友というべき存在=小林武史が今回も音楽を担当。 「そういう意味では岩井俊二監督にまつわる人たちが、複雑に絡み合ってできた映画。 〝岩井俊二遊び〟みたいなものを積極的に取り入れたし、〝岩井俊二のお祭り〟をやっている感覚でした」(川村P) 監督初の仙台ロケで起きた必然としての偶然 撮影はほぼ、仙台オールロケ。 監督にとって故郷であるこの地での撮影は初となる。 「これまで仙台で撮影することはずっと避けていたそうですが、今回は監督の自伝的な要素が少なからず入っている物語なので、故郷で撮るのは必然だったのではないでしょうか」(川村P) 監督が仙台ロケを避けていた理由は、そのロケーションにもあった。 比較的平らでなだらかな道が多い仙台は、「画になりにくい」と当初は渋っていたそうだが……。 「いざ探してみるといい場所がたくさんあったとおっしゃっていました。 監督のマジックは間違いなくロケーション選定にもあると思う。 最終的には監督自ら仙台にレンタカーで何度も通い、自分の足でロケ地を見て回って決めていると聞いて、究極のDIYの方なんだなと思いました」(川村P)「ロケハンをする時は〝車に自転車を積んでおいてくれ〟といつも言われます」と田井LPも語る。 「いい場所が見つかるとその場で自転車を下ろして、1人でロケハンしに行くんです。 それ以前に岩井組にはグーグルロケハンというものがありまして。 グーグルマップから素敵なおうちや使えそうな道を探し、スタッフが1軒1軒歩いて撮影交渉にあたるのが恒例です」遠野家の立派な縁側のある日本家屋、裕里と鏡史郎の再会の場となる正三の趣のある家(仙台では少ない急こう配の坂の上にあることも決め手となった)、裕里が家族で暮らすデザインフルな豪邸など、「本当にいい物件に当たる率が高い」と水野P。 また岩井監督といえば、もはや伝説的な〝天気運〟の持ち主。 かつて『Love Letter』の撮影時に、〝10月の北海道に大雪を降らせた〟エピソードは有名だが、本作の撮影は2018年の夏でちょうど台風シーズン。 「天気さえも味方にする」(水野P)岩井組は、一度も雨降らしをすることなく奇跡的な偶然によって生まれた瞬間を収めていた。 鮎美と颯香が未咲の葬式後2人で並んで傘をさしている姿、東京に戻る鏡史郎を2人が見送る時も同じく傘をさしている。 いずれもタイミングよく降って来た〝リアルな〟雨がもたらしたものだが、「ラブレターのいくつもの誤配や錯綜が、人生を作っていく。 その美しさを教えてくれるのは、傘をさした二人の少女だ。 (以下略)」と新海誠監督もコメントしているほど、印象深いシーンとなっている。 また鮎美が水遊びをする美しい滝も、「台風一過のおかげでいつも以上に水が澄んできれいでした」(水野P)という幸運だけでなく、「滝のシーンのドローン映像は、死んだ母=未咲の目線という解釈もできる」と川村P。 「つまり最初から鮎美は母に見守られていたという風に見えなくもない。 でもそれも偶然なんです。 脚本に書かれていないことをドキュメンタリー風に取り入れた時に、映画が最強になると監督は思っていらっしゃるんじゃないかな。 偶然を味方につけて初めて映画が豊かに面白くなるし、監督は偶然を必然に変えるテクニックもお持ちだと感じました」 監督の呼吸、リズムが現場を動かす 「岩井監督は現場を混沌とさせる。 これはいい意味でですが、狐につままれるような映画を作る人だと僕は思っています」(川村P)実際に現場では独特の岩井ワードが飛び交うことも。 「扇風機の風の回転が変わっちゃった。 これはらほんの一部だが、「絶えず定石にならないように、不思議な時間や空間を作ろうとしている人だと思うし、それが監督の作家性である気もします。 例えば〝扇風機の風を柔らかく〟という表現ひとつにしても、単に風を強める弱めるじゃなく、光の具合なのかカーテンの揺れ方なのかカメラのシャッター速度なのか、いろんな可能性が考えられる。 スタッフがそれを聞いてどうするか考えるというのが、正しい映画作りでもありますよね」突如、現場で監督自らがセッティングしてある小物や装飾物の位置を大胆に置き換えることも。 「あれは画を整えているというより、その場の空気やリズムを変えているんじゃないかと思います」 その一方で、役者への演出を事細かにつけることはしない。 「今回は演技初挑戦の方もいらっしゃいましたが、ほぼ(芝居を)つけることはなかった。 俳優さんのそのままの姿が一番面白いと思っていらっしゃるし、そこもやはりドキュメンタリーなんだと思います。 直前にセリフが変わったり、増えたりということも普通にありましたね」(臼井真之介プロデューサー、以下臼井P) 「ドキュメンタリー的なフィクションを作る。 そういう世界がまるでそこにあるように見せるのが岩井作品の面白さ。 俳優さんに何かを強制するよりは、その方の持っている人間としての良さを撮るためには何をすればいいかを考えてらっしゃるんじゃないでしょうか。 僕はずっと言っているんですが、監督の作家性そのものが〝呼吸〟の気持ちよさ、気持ち悪さで成り立っていると思う。 現場で吸って吐いている監督の空気のリズムが、俳優やスタッフと合っていなければわざとかき乱しにいく。 その呼吸を分かり得るスタッフがいて、そこにはまる俳優がいるということだと思います」 息が詰まるような一連の長回しが多用されるのも、確かにドキュメンタリー的だ。 現在の裕里が鏡史郎に姉の死を告げるまでの一連は、撮影時12分を超える長尺。 松は初恋の人の突然の来訪に対する驚きと喜びを表すコミカルな芝居から始まり、大粒の涙を流す独白の泣き芝居までを圧巻の演技力で見せつけた。 その間本番中であってもカメラや照明に常に指示を出し続ける監督は、セリフが終わってもなかなかカットをかけない。 それは他のシーンでも同じくで、高校時代の未咲が鏡史郎の前でスピーチの練習をするシーンでも、延々とカットはかからず。 だが動じることなく自然な笑顔で芝居を続ける広瀬と神木の後方に、撮影部が足音を忍ばせて回り込むというアクティブなカメラワークも見られた。 「才能ある監督さんって徹底的に構築したうえでそれをあえて壊し、そこから偶然を拾い上げて、さらにそれを強度のあるものに構築し直すということをやっている気がします。 それをものすごい精度でやっているのが岩井監督。 岩井作品の何かとりつかれてしまうような魅力はそこにあると思うし、影響を受けた監督は大勢いると思います」(川村P) 〝音〟への強いこだわり ポストプロダクションは約10か月。 「CGもほぼない作品にしては、かなり長いポスプロだと思います。 その中で一番時間がかったのが〝音〟。 監督は効果音からすべてご自身のスタジオで作られるので、改めてDIYを極めてらっしゃる方だなと思いました」(臼井P)「音に関しては、基本的に(撮影時と)同じ環境に行って録るのが監督のこだわりなんです。 それが何より本物の音なので」と水野P、田井LPも語る。 「夏のシーンでは蝉の声を後からかなり足しているのですが、監督は〝昼に鳴く蝉と夜に鳴く蝉は違う〟とか、〝この地域にこの種類の蝉はいない〟とかをすべて把握している(笑)。 なので世界中の蝉の鳴き声を録ってネットにアップされている〝蝉博士〟みたいな方と連絡を取って、その方から蝉の音源をいただいたりもしています」また滝で鮎美達が遊ぶ〝水音〟も「深さが足りない」という監督の一言と共に、スタッフの元にビニールプールが郵送されてきたとか。 「そのプールに水をため皆で編集された映像を見ながら、広瀬さんの足が水に浸かった時の〝パシャパシャ〟っていう音を再現したり……」 こうしてついに完成した本作を「やっぱり岩井俊二監督はすごいということを、改めて確認できる映画には間違いなくなっている」と川村P。 「それがある種のエンタテインメントとして成立してしまっているのが不思議で、奇跡的な映画だとも思います。 非常に古典的なお話ですが、岩井監督の才能はいつも新しいし、誰よりも前にいる。 不在のヒロインが「自殺」していること。 そして、その要因でもあった豊川悦司扮する男の登場と、彼の語ることばの奇妙な、だが、確かな説得力。 暗部と呼ぶより他はないこの「引力」は、ぬぐえない魔として依然そこに存在しているにもかかわらず、映画の最後のカットで広瀬が浴びる風には、練りに練られた優しさがある。 雰囲気で流れている風ではない。 あの風は、この作品と2時間、親密なひとときを過ごしたわたしたちを、間違いなく救済している。 この映画特有の、一言では形容不可能な「誘い」のウェーブフォームは、岩井俊二だけのものだ。 あらゆるファクターが渾然一体となって「呼びこんでくる」。 これは一種のフォースかもしれない。 岩井俊二の作品は 「森」のようなものだ。 そこにはブリリアントなものと、ダークなものが共棲している。 たとえば木漏れ日の眩しさが降り注ぐ一方、深遠な夜露が敷きつめられてもいる。 フィルモグラフィを参照していただきたい。 前作『リップヴァンウィンクルの花嫁』までは、綺麗にハーフ&ハーフ。 ブリリアントが7本。 ダークが7本。 そしてドキュメンタリーが2本である。 (フィルモグラフィは、あくまでも劇場で公開された作品だけに限っている。 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』は1993年のテレビ作品だが、95年に劇場公開され、『FRIED DRAGON FISH』もやはり93年テレビ作品だが、96年に映画として公開されている。 岩井には深夜ドラマで華々しい経歴があり、それらは劇場公開しても遜色のないクオリティである。 また、岩井作品には複数のヴァージョンが存在し、それはテレビやネットなどメディアの違いに対応した「別作品」でもある。 また、ショートムービーの発展形としての劇場版などもあることから、枝分かれ=細胞分裂も、岩井俊二という「森」の重要な点だ。 それも漠然とした「闇」ではなく、現実に即したリアルに基づく人間の「闇」である。 そのピークが、中学校を舞台に「いじめる側」と「いじめられる側」の内面を、画期的な手法で描き出した『リリイ・シュシュのすべて』だった。 ここでは、「夏休み」を境に(「境界線」も岩井作品に頻出するモチーフである)人間が一変するキャラクターが登場するが、『ラストレター』が「夏休み」の物語でもあることは象徴的なことかもしれない。 岩井の代表作のひとつとなるであろう『打ち上げ花火』(巨匠、大島渚は「日本映画の100年」というドキュメンタリーを監督した際、この作品を選出し、自らのナレーションで解説している。 『打ち上げ花火』はテレビ作品だが、100年の歴史を象徴する「映画」の1本と断じたのである)は、タイトル通り「夏休み」の物語。 「夏休み」とは、短いわけではないが、決して永遠ではない、あらかじめ「終わり」が定められている期間のことである。 だからこそ、そこではもう二度と起きない出来事が起きるし、少女や少年にとっては、後に「振り返ることしかできない」轍が形成されることになる。 岩井は、この「とき」のつかまえ方が絶妙であり、なぜ人は「夏休み」を記憶するのか、また想い出として再生するのか、その原理的本能を、おそらく熟知している。 『ラストレター』のベースにあるのは、この「夏休み」感覚だ。 日本の夏の中心にはお盆がある。 お盆とは「死者」の帰還のための儀式だが、葬儀から幕を開けるこの映画には「とむらい」の情感が、「死者」を悼む季節と相まって、わたしたちの深層を狙い撃ちする。 「死者」が召喚する記憶の物語。 たとえば、そんなふうに『ラストレター』を捉えることも可能だ。 その意味において、岩井にとって処女長編映画にあたる『Love Letter』も召喚されることになる。 ここでも「手紙」の往来が物語を躍動させていたが、『ラストレター』においては、かつて描かれた「届くはずのない相手への手紙」と「文通」というモチーフが、さらに大胆な構想と構造によって、いわば活劇化されていく。 「死者」である姉のふりをする松たか子の振る舞いは、ひょっとすると「普通ではない」かもしれないが、初恋相手に再会したいという「出来心」であり、観る側も共振していく。 観客をヴァイブレーションさせる「語り」のポテンシャルもまた、岩井の大きなオリジナリティのひとつ。 ある踏み外しから、流れ流れて、とんでもない地点へと辿り着く『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、そのキャタピラーを思わせる前進を、あくまでも軽妙に捉えた異形の一作。 あれよあれよという間に展開していく「雪崩現象」のようなストーリーテリングが極まった例でもある。 この「語り」は、『ラストレター』において、「小説」というかつてないモチーフを投入することで、さらに洗練・成熟・拡張され、破格の次元へと到達している。 過去すべての 岩井作品への「返信」。 『Love Letter』がそうだったように、『ラストレター』もまた「過去による現在」の物語と「現在による過去」の物語の邂逅を見つめている(かつて中山美穂が二役を演じたように、広瀬すずも二役を体現している)。 「手紙」が物語をポップに駆動させ、「小説」が深い喪失感を浮き彫りにする。 この陰影が鮮やかだからこそ、ラストの広瀬すずの声と横顔に、わたしたちは救われることになるのだ。 少女ふたりの季節ということでは『花とアリス』も想起させるが、何よりも今回のキャストの顔ぶれが岩井のフィルモグラフィを包括して圧巻である。 『四月物語』の松たか子、『Love Letter』の中山美穂、『undo』『Love Letter』のみならず深夜ドラマ時代からの豊川悦司、さらには『Love Letter』『PiCNiC』『スワロウテイル』の鈴木慶一、そして岩井俊二主演映画『式日』を撮った庵野秀明までもが召喚された本作は、その存在自体が、過去すべての岩井作品への「返信」であるかのようにも思える。 なぜなら、かつて別の作品で別な人物として存在していた演者たちが、新しい人物として、最新の「夏休み」に出現することは、「死者」の帰還や、「届くはずのない相手に届く手紙」に、とてもよく似ているからである。 ブリリアントなフォルムで、ダークな秘密をも抱擁する『ラストレター』(それは映画であると同時に、小説であり、さらにまっさらな意味での手紙でもあるだろう)の読後感があくまでもさわやかなのは、だから、なのかもしれない。

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MOVIX京都 上映スケジュール

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東映太秦映画村 所在地:京都市右京区 は、夏の恒例イベント「映画村ひえひえ王国」を今年も開催いたします。 画像1: メインビジュアル 今年はサブタイトルを「紅白対抗 忍者うんどうかい」と題して、忍者たちと一緒に体を動かし、ずぶ濡れになって遊んでいただけます。 手洗いダンスを踊って、正しい手洗い方法を習得、さらに高さ3. 5メートルの大きな「巨忍くん」、初登場の「しのびちゃん」とのウォーターバトルも。 みんなでソーシャルディスタンスを守りながら、ゲームを攻略してください。 暑い暑い京都の夏、映画村でひんやりスッキリできるイベントです。 他に映画村は室内アトラクションも豊富ですので、着替えた後も涼しく遊べます。 おトクにアトラクションで遊べるわくわくチケットも販売中ですので、「ひえひえ王国」のあとはアトラクションで思いっきり遊んでいただけます。 【「ひえひえ王国 紅白対抗 忍者うんどうかい」プログラム】 ・手洗いダンス みんなで踊って、正しい手洗いをマスターしよう! ・リンボーダンス 忍者が放つ水流を、リンボーダンスでくぐれるかな!? ・玉はこび競争 流しそうめんのようにパイプから水といっしょに流れてくる玉を、コップでキャッチ! ゴールに入れ得点をゲットしよう! ・フリスビーダービー ワイヤーに吊るされたフリスビーを水鉄砲で集中攻撃!30秒以内にフリスビーをたくさん移動させよう。 ・巨忍&しのびちゃんバトル! クライマックスは全員で水かけバトル。 「巨忍くん」「しのびちゃん」も登場してきて水をかけてかけてかけまくれ!! 【整理券付き前売り入村券】 映画村ではイベント時の混雑を避けるため、「ひえひえ王国 紅白対抗忍者 うんどうかい」整理券付き前売り入村券を発売いたします。 定数に達しない公演は、当日映画村にて整理券を配布しますので、 ご入村のうえ整理券をお受け取りください。 ご持参いただくか会場にてお買い求めください。

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文化史24 京都の映画産業

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Introduction イントロダクション 『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『花とアリス』と数々の名作を世に送り出してきた映画監督・岩井俊二。 20年以上ものキャリアの中で、巧みにその時代を切り取りながら様々な愛の形を表現し、いずれも熱狂的なファンを生み出してきた岩井が、初めて出身地である宮城を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く『ラストレター』。 名匠・岩井俊二のもとに、松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、神木隆之介、福山雅治ら超豪華キャストが一堂に集結。 中山美穂、豊川悦司も参加し、名作『Love Letter』を感じさせる世界観でありながら、全く新しいエンタテインメントを作り出した。 Story ストーリー 裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。 裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。 未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。 そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。 勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。 裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。 その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎(回想・神木隆之介)と未咲(回想・広瀬すず)、そして裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。 このお仕事をしていて、新しい方と出会うことも面白いことではありますが、 一度ご一緒した方に声をかけてもらえると 「あっ、嫌われてはいなかったのかな」とも思ったりします 笑。 だいぶ大人になって岩井さんとまたお仕事できる楽しみが 今回の役にはあるのかなと思っています。 この作品には切ない気持ちみたいなものが溢れていますが、 決して岩井さんがそれだけを思っているのではないのかも、とも思います。 緊張したまま終わるのかなって思いますが、 それでもいいかなって思っています(笑)。 Comment いつかまた豊川さんとの共演はもちろんのこと、 岩井監督作品に出演できたらいいなと思っていたので、 今回声をかけていただき、とても嬉しかったです。 岩井監督は、普段とてもほんわかした感じの方ですが、 現場に入るとスイッチが入り、少年のようにまっすぐで、 独特の世界観があり、現場にいると異次元にいるような感覚になります。 ですので、撮影現場はとても楽しいです。 岩井監督とは、特に事前に役柄について話をしたりすることはないのですが、 現場でのやりとりの中で役を作り上げていく感じです。 豊川さんとは、今回共演シーンは少ないのですが、 それでも今までの二人の歴史があるので、 短い共演シーンの中でも積み重ねてきた何かが スクリーンには映っているのではないかと思います。 Comment 岩井監督の作品に初めて参加させて頂くことになりました。 過去作品も拝見しており、 人間味溢れる暖かい作品が多い印象なので、 今回演じる乙坂鏡史郎として、 岩井監督が撮られる世界観の中で精一杯生きたいと思います。 そして、僕にとって憧れでもある福山雅治さん。 今回は福山さんの学生時代を演じさせて頂くので、 嬉しさとプレッシャーでいっぱいですが、 先輩の胸をお借りするつもりで丁寧に演じたいと思います。 広瀬すずさんは、以前ドラマでご一緒させて頂きましたが、 また共演することが出来て嬉しいです。 素敵な共演者の皆さんに囲まれて芝居が出来る喜びを噛みしめながら、 日々撮影に励みたいと思います。 1963年1月24日、宮城県仙台市生まれ。 88年、桑田佳祐「いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)」PVをディレクション、プロとしてスタート。 91年、深夜ドラマ「見知らぬ我が子」でドラマ初演出。 93年、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」がテレビ作品にもかかわらず日本映画監督協会新人賞に輝く。 94年、中篇『undo』で映画監督デビュー。 95年、初長編『Love Letter』は社会現象と化し、異例のロングランヒット。 96年、念願&渾身の大作『スワロウテイル』完成、公開。 以降、ショートムービー、ドキュメンタリー、アメリカ映画、アニメーションと、縦横無尽にエリアを広げ、いずれの作品でも唯一無二の「岩井美学」(1990年代、深夜ドラマで一大ブームを巻き起こした際、フジテレビが提唱したキャッチコピー)を証明している。 Comment かつて「Love Letter」という映画を作りましたが、 当時は手紙のやりとりのあった時代でした。 あれから通信手段は激変し、 SNSでやり取りできてしまうこの時代にあって、 手紙を使った物語は現代においては不可能だと思っていましたが、 ある日それを可能にするアイディアを思いついてしまったところから この物語の構想がスタートしました。 ある夏休みの間に起きた世代を超えた手紙物語です。 今回初めてロケーションを故郷宮城に設定しました。 劇映画としては初の試みです。 今回は川村元気プロデューサーとのお仕事ということで このユニットのコラボを楽しもうと思っています。 ご一緒するのが初めての俳優さんもいるし 以前お仕事をしたことのある俳優さんもいます。 プロの俳優さんもいればそうでない方もいます。 そこからどういう化学反応が起きるか今から楽しみです。 Opening1 Mask• Opening2 Mask• Reply Reunion• Send And Return1• Letters• Send And Return2• Recollection• Mask• Library• Original Frog Song• Ato• Girl Cousin1• Old Classroom• Recollection Slow• Girl Cousin2• Reply End• カエルノウタ movie ver. 大げさじゃなく〝岩井俊二前、岩井俊二後〟というのはあると思います」そう語るのは本作の企画・プロデュースの川村元気プロデューサー(以下、川村P)。 もともと監督の(実写版)『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の大ファンだった川村Pは、共に岩井ファンであり友人でもあるRADWIMPSの野田洋次郎が岩井監督と共通の知人だったことから、その交流は10年以上前に遡る。 野田以外にも新海誠監督、大根仁監督など岩井ファンを公言するクリエイターとの仕事も多く、「岩井俊二ファンが近い年代で横並びで映画を作っていた感覚」の中、ついにアニメ版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で初タッグを組むことに。 『打ち上げ花火~』の製作段階から、本作『ラストレター』の企画を監督と共に詰めていた川村Pの中で、「岩井監督のベスト盤的な作品にしよう」という思いが強まっていった。 「ある種の〝岩井オマージュ〟というか、これまでの岩井作品のモチーフがたくさん詰まった作品ですね。 僕自身、岩井俊二という監督がどうやって映画を作っているのかということにすごく興味があった。 それを知るには一緒に1本映画を作らせてもらうのが一番早いと思ったんです」 三角形の文通という発明 本作のタイトルを聞いてあの名作『Love Letter』(95)を想起する人も多いだろう。 当初から『Love Letter』のアンサームービー的な要素は意識しつつ、「最初にあがってきた脚本は今とは全く違うものだった」と川村P。 「簡潔に言えばもっと重たいお話でした。 僕はとても好きでしたけどね(笑)。 それとこれは岩井作品の特徴とも言えますが、前半と後半で全く違う物語でもあった。 ご本人もおっしゃっていましたが、プリンだと思っていたらイクラだったくらいの違い(笑)。 でも今回はあえてプリンならプリンで統一しましょうと。 監督との共通認識として、今回はエンタテインメントを作ろうというものがあったので」 そこで監督は物語そのものをガラッと改変。 「『Love Letter』や『スワロウテイル』(96)に繋がるような岩井監督らしい、けれど非常に王道なエンタテインメントになっているなと感じさせる脚本でした。 全体としては非常にユニークな設計で、かつアイディアの発明がある」その〝アイディアの発明〟こそが、物語のキモでもある三角形の文通だ。 互いが間違った相手に手紙を送り続けているにも関わらず、文通が奇妙に成立してしまう面白さ。 SNS全盛の現代において手紙をキーアイテムにしたのも興味深い。 「そもそものきっかけは昔に残された1通の手紙。 過去の記憶と手紙という古いメディアが、同時に現代に立ち上がってくる構造も秀逸だと思います」(川村P) 豪華キャスティングが実現 撮影のギリギリまで続いた脚本作業と並行し、2016年末から本格的なキャスティングを開始。 主演の松たか子は『四月物語』(98)以来、久々の岩井組。 〝岩井作品のベスト盤〟には絶対欠かせない女優として、真っ先に名前が挙がる。 その実力は誰もが認めるところだが「シリアスはもちろん、コミカルなお芝居にも長けている女優さんであることも今回はとても大事でした」と水野昌プロデューサー(以下、水野P)は語る。 「裕里という役はシリアスに寄り過ぎると危険なキャラクター。 鏡史郎のことを何十年もジメジメ想い続けていたとなると少し怖いですし、夫の宗二郎に携帯を壊されたりするシーンも明るく演じてもらわないと〝え?この夫婦大丈夫?〟と思われかねないので」 一方で岩井組に初参戦となるキャスト陣にも積極的にオファー。 声優として『打ち上げ花火~』に出演していた広瀬すず、新海誠監督の『君の名は。 』で声優を務めた神木隆之介、そしてキャスティング当時はほぼ無名だった森七菜は後に同じく新海監督の『天気の子』で一躍その名を知られることになるが、本作では大抜擢に他ならない。 「広瀬さん、神木さんは共に監督から一度仕事をしてみたいという意向がありました。 森さんに関しては140人ほどのオーディションから選びましたが、書類やビデオの段階から監督が〝断トツで彼女がいい〟とおっしゃっていましたね。 実際会ってみると、満場一致で決まりました」(川村P) 監督としても活躍する庵野秀明は、自身の監督作『式日』(00)で岩井を主演俳優として起用した過去があるのは周知の事実。 「庵野さんのキャスティングは岩井監督でないと思いつかないし、実現もしなかったでしょう。 松さんと庵野さんのシーンは完全にコメディですし、改めて岩井監督は〝センスオブユーモア〟の人なんだなと思います」(川村P)ちなみに宗二郎は当初医者の設定だったが、庵野の出演が決まってから岩井監督自ら漫画家に変更したのだとか。 小室等、水越けいこという大ベテランミュージシャンを俳優として起用したのも、もちろん監督のアイディア。 演技初挑戦となった水越に、庵野が親身なアドバイスをしていたという微笑ましいエピソードも。 意外にも難航したのが、現在の鏡史郎役。 「誰にお願いしようかと悩んでいる時に、監督がふっと福山雅治さんのお名前を挙げたんです。 お仕事をしたことはなかったのですが以前から面識はあったようで、そのイメージがあったのかもしれません。 ただ鏡史郎というかつては輝いていたけど、今はくすぶっているというキャラクターを演じるにあたって、今までの福山さんのイメージとは違う一面を見たいと思ってのキャスティングでしたが、監督のイメージ通り今までに見たことのない新しい福山さんを見ることができました。 」(水野P)そして『Love Letter』ファンは衝撃を受けること必至の中山美穂、豊川悦司という2人がまさかの役どころで出演。 「監督も〝出演してくれるか分からない〟と半ばあきらめモードだったんですが、快諾していただけて本当にありがたかったです」(田井えみラインプロデューサー、以下田井LP)。 スタッフも岩井組オールスターズといったメンバーが集結。 撮影監督は『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)の神戸千木。 かつて岩井監督と『Love Letter』をはじめ数多くの作品でタッグを組んできた名カメラマン=篠田昇に師事していた撮影カメラマンでもある。 他にも『四月物語』で美術を担当していた都築雄二、監督の盟友というべき存在=小林武史が今回も音楽を担当。 「そういう意味では岩井俊二監督にまつわる人たちが、複雑に絡み合ってできた映画。 〝岩井俊二遊び〟みたいなものを積極的に取り入れたし、〝岩井俊二のお祭り〟をやっている感覚でした」(川村P) 監督初の仙台ロケで起きた必然としての偶然 撮影はほぼ、仙台オールロケ。 監督にとって故郷であるこの地での撮影は初となる。 「これまで仙台で撮影することはずっと避けていたそうですが、今回は監督の自伝的な要素が少なからず入っている物語なので、故郷で撮るのは必然だったのではないでしょうか」(川村P) 監督が仙台ロケを避けていた理由は、そのロケーションにもあった。 比較的平らでなだらかな道が多い仙台は、「画になりにくい」と当初は渋っていたそうだが……。 「いざ探してみるといい場所がたくさんあったとおっしゃっていました。 監督のマジックは間違いなくロケーション選定にもあると思う。 最終的には監督自ら仙台にレンタカーで何度も通い、自分の足でロケ地を見て回って決めていると聞いて、究極のDIYの方なんだなと思いました」(川村P)「ロケハンをする時は〝車に自転車を積んでおいてくれ〟といつも言われます」と田井LPも語る。 「いい場所が見つかるとその場で自転車を下ろして、1人でロケハンしに行くんです。 それ以前に岩井組にはグーグルロケハンというものがありまして。 グーグルマップから素敵なおうちや使えそうな道を探し、スタッフが1軒1軒歩いて撮影交渉にあたるのが恒例です」遠野家の立派な縁側のある日本家屋、裕里と鏡史郎の再会の場となる正三の趣のある家(仙台では少ない急こう配の坂の上にあることも決め手となった)、裕里が家族で暮らすデザインフルな豪邸など、「本当にいい物件に当たる率が高い」と水野P。 また岩井監督といえば、もはや伝説的な〝天気運〟の持ち主。 かつて『Love Letter』の撮影時に、〝10月の北海道に大雪を降らせた〟エピソードは有名だが、本作の撮影は2018年の夏でちょうど台風シーズン。 「天気さえも味方にする」(水野P)岩井組は、一度も雨降らしをすることなく奇跡的な偶然によって生まれた瞬間を収めていた。 鮎美と颯香が未咲の葬式後2人で並んで傘をさしている姿、東京に戻る鏡史郎を2人が見送る時も同じく傘をさしている。 いずれもタイミングよく降って来た〝リアルな〟雨がもたらしたものだが、「ラブレターのいくつもの誤配や錯綜が、人生を作っていく。 その美しさを教えてくれるのは、傘をさした二人の少女だ。 (以下略)」と新海誠監督もコメントしているほど、印象深いシーンとなっている。 また鮎美が水遊びをする美しい滝も、「台風一過のおかげでいつも以上に水が澄んできれいでした」(水野P)という幸運だけでなく、「滝のシーンのドローン映像は、死んだ母=未咲の目線という解釈もできる」と川村P。 「つまり最初から鮎美は母に見守られていたという風に見えなくもない。 でもそれも偶然なんです。 脚本に書かれていないことをドキュメンタリー風に取り入れた時に、映画が最強になると監督は思っていらっしゃるんじゃないかな。 偶然を味方につけて初めて映画が豊かに面白くなるし、監督は偶然を必然に変えるテクニックもお持ちだと感じました」 監督の呼吸、リズムが現場を動かす 「岩井監督は現場を混沌とさせる。 これはいい意味でですが、狐につままれるような映画を作る人だと僕は思っています」(川村P)実際に現場では独特の岩井ワードが飛び交うことも。 「扇風機の風の回転が変わっちゃった。 これはらほんの一部だが、「絶えず定石にならないように、不思議な時間や空間を作ろうとしている人だと思うし、それが監督の作家性である気もします。 例えば〝扇風機の風を柔らかく〟という表現ひとつにしても、単に風を強める弱めるじゃなく、光の具合なのかカーテンの揺れ方なのかカメラのシャッター速度なのか、いろんな可能性が考えられる。 スタッフがそれを聞いてどうするか考えるというのが、正しい映画作りでもありますよね」突如、現場で監督自らがセッティングしてある小物や装飾物の位置を大胆に置き換えることも。 「あれは画を整えているというより、その場の空気やリズムを変えているんじゃないかと思います」 その一方で、役者への演出を事細かにつけることはしない。 「今回は演技初挑戦の方もいらっしゃいましたが、ほぼ(芝居を)つけることはなかった。 俳優さんのそのままの姿が一番面白いと思っていらっしゃるし、そこもやはりドキュメンタリーなんだと思います。 直前にセリフが変わったり、増えたりということも普通にありましたね」(臼井真之介プロデューサー、以下臼井P) 「ドキュメンタリー的なフィクションを作る。 そういう世界がまるでそこにあるように見せるのが岩井作品の面白さ。 俳優さんに何かを強制するよりは、その方の持っている人間としての良さを撮るためには何をすればいいかを考えてらっしゃるんじゃないでしょうか。 僕はずっと言っているんですが、監督の作家性そのものが〝呼吸〟の気持ちよさ、気持ち悪さで成り立っていると思う。 現場で吸って吐いている監督の空気のリズムが、俳優やスタッフと合っていなければわざとかき乱しにいく。 その呼吸を分かり得るスタッフがいて、そこにはまる俳優がいるということだと思います」 息が詰まるような一連の長回しが多用されるのも、確かにドキュメンタリー的だ。 現在の裕里が鏡史郎に姉の死を告げるまでの一連は、撮影時12分を超える長尺。 松は初恋の人の突然の来訪に対する驚きと喜びを表すコミカルな芝居から始まり、大粒の涙を流す独白の泣き芝居までを圧巻の演技力で見せつけた。 その間本番中であってもカメラや照明に常に指示を出し続ける監督は、セリフが終わってもなかなかカットをかけない。 それは他のシーンでも同じくで、高校時代の未咲が鏡史郎の前でスピーチの練習をするシーンでも、延々とカットはかからず。 だが動じることなく自然な笑顔で芝居を続ける広瀬と神木の後方に、撮影部が足音を忍ばせて回り込むというアクティブなカメラワークも見られた。 「才能ある監督さんって徹底的に構築したうえでそれをあえて壊し、そこから偶然を拾い上げて、さらにそれを強度のあるものに構築し直すということをやっている気がします。 それをものすごい精度でやっているのが岩井監督。 岩井作品の何かとりつかれてしまうような魅力はそこにあると思うし、影響を受けた監督は大勢いると思います」(川村P) 〝音〟への強いこだわり ポストプロダクションは約10か月。 「CGもほぼない作品にしては、かなり長いポスプロだと思います。 その中で一番時間がかったのが〝音〟。 監督は効果音からすべてご自身のスタジオで作られるので、改めてDIYを極めてらっしゃる方だなと思いました」(臼井P)「音に関しては、基本的に(撮影時と)同じ環境に行って録るのが監督のこだわりなんです。 それが何より本物の音なので」と水野P、田井LPも語る。 「夏のシーンでは蝉の声を後からかなり足しているのですが、監督は〝昼に鳴く蝉と夜に鳴く蝉は違う〟とか、〝この地域にこの種類の蝉はいない〟とかをすべて把握している(笑)。 なので世界中の蝉の鳴き声を録ってネットにアップされている〝蝉博士〟みたいな方と連絡を取って、その方から蝉の音源をいただいたりもしています」また滝で鮎美達が遊ぶ〝水音〟も「深さが足りない」という監督の一言と共に、スタッフの元にビニールプールが郵送されてきたとか。 「そのプールに水をため皆で編集された映像を見ながら、広瀬さんの足が水に浸かった時の〝パシャパシャ〟っていう音を再現したり……」 こうしてついに完成した本作を「やっぱり岩井俊二監督はすごいということを、改めて確認できる映画には間違いなくなっている」と川村P。 「それがある種のエンタテインメントとして成立してしまっているのが不思議で、奇跡的な映画だとも思います。 非常に古典的なお話ですが、岩井監督の才能はいつも新しいし、誰よりも前にいる。 不在のヒロインが「自殺」していること。 そして、その要因でもあった豊川悦司扮する男の登場と、彼の語ることばの奇妙な、だが、確かな説得力。 暗部と呼ぶより他はないこの「引力」は、ぬぐえない魔として依然そこに存在しているにもかかわらず、映画の最後のカットで広瀬が浴びる風には、練りに練られた優しさがある。 雰囲気で流れている風ではない。 あの風は、この作品と2時間、親密なひとときを過ごしたわたしたちを、間違いなく救済している。 この映画特有の、一言では形容不可能な「誘い」のウェーブフォームは、岩井俊二だけのものだ。 あらゆるファクターが渾然一体となって「呼びこんでくる」。 これは一種のフォースかもしれない。 岩井俊二の作品は 「森」のようなものだ。 そこにはブリリアントなものと、ダークなものが共棲している。 たとえば木漏れ日の眩しさが降り注ぐ一方、深遠な夜露が敷きつめられてもいる。 フィルモグラフィを参照していただきたい。 前作『リップヴァンウィンクルの花嫁』までは、綺麗にハーフ&ハーフ。 ブリリアントが7本。 ダークが7本。 そしてドキュメンタリーが2本である。 (フィルモグラフィは、あくまでも劇場で公開された作品だけに限っている。 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』は1993年のテレビ作品だが、95年に劇場公開され、『FRIED DRAGON FISH』もやはり93年テレビ作品だが、96年に映画として公開されている。 岩井には深夜ドラマで華々しい経歴があり、それらは劇場公開しても遜色のないクオリティである。 また、岩井作品には複数のヴァージョンが存在し、それはテレビやネットなどメディアの違いに対応した「別作品」でもある。 また、ショートムービーの発展形としての劇場版などもあることから、枝分かれ=細胞分裂も、岩井俊二という「森」の重要な点だ。 それも漠然とした「闇」ではなく、現実に即したリアルに基づく人間の「闇」である。 そのピークが、中学校を舞台に「いじめる側」と「いじめられる側」の内面を、画期的な手法で描き出した『リリイ・シュシュのすべて』だった。 ここでは、「夏休み」を境に(「境界線」も岩井作品に頻出するモチーフである)人間が一変するキャラクターが登場するが、『ラストレター』が「夏休み」の物語でもあることは象徴的なことかもしれない。 岩井の代表作のひとつとなるであろう『打ち上げ花火』(巨匠、大島渚は「日本映画の100年」というドキュメンタリーを監督した際、この作品を選出し、自らのナレーションで解説している。 『打ち上げ花火』はテレビ作品だが、100年の歴史を象徴する「映画」の1本と断じたのである)は、タイトル通り「夏休み」の物語。 「夏休み」とは、短いわけではないが、決して永遠ではない、あらかじめ「終わり」が定められている期間のことである。 だからこそ、そこではもう二度と起きない出来事が起きるし、少女や少年にとっては、後に「振り返ることしかできない」轍が形成されることになる。 岩井は、この「とき」のつかまえ方が絶妙であり、なぜ人は「夏休み」を記憶するのか、また想い出として再生するのか、その原理的本能を、おそらく熟知している。 『ラストレター』のベースにあるのは、この「夏休み」感覚だ。 日本の夏の中心にはお盆がある。 お盆とは「死者」の帰還のための儀式だが、葬儀から幕を開けるこの映画には「とむらい」の情感が、「死者」を悼む季節と相まって、わたしたちの深層を狙い撃ちする。 「死者」が召喚する記憶の物語。 たとえば、そんなふうに『ラストレター』を捉えることも可能だ。 その意味において、岩井にとって処女長編映画にあたる『Love Letter』も召喚されることになる。 ここでも「手紙」の往来が物語を躍動させていたが、『ラストレター』においては、かつて描かれた「届くはずのない相手への手紙」と「文通」というモチーフが、さらに大胆な構想と構造によって、いわば活劇化されていく。 「死者」である姉のふりをする松たか子の振る舞いは、ひょっとすると「普通ではない」かもしれないが、初恋相手に再会したいという「出来心」であり、観る側も共振していく。 観客をヴァイブレーションさせる「語り」のポテンシャルもまた、岩井の大きなオリジナリティのひとつ。 ある踏み外しから、流れ流れて、とんでもない地点へと辿り着く『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、そのキャタピラーを思わせる前進を、あくまでも軽妙に捉えた異形の一作。 あれよあれよという間に展開していく「雪崩現象」のようなストーリーテリングが極まった例でもある。 この「語り」は、『ラストレター』において、「小説」というかつてないモチーフを投入することで、さらに洗練・成熟・拡張され、破格の次元へと到達している。 過去すべての 岩井作品への「返信」。 『Love Letter』がそうだったように、『ラストレター』もまた「過去による現在」の物語と「現在による過去」の物語の邂逅を見つめている(かつて中山美穂が二役を演じたように、広瀬すずも二役を体現している)。 「手紙」が物語をポップに駆動させ、「小説」が深い喪失感を浮き彫りにする。 この陰影が鮮やかだからこそ、ラストの広瀬すずの声と横顔に、わたしたちは救われることになるのだ。 少女ふたりの季節ということでは『花とアリス』も想起させるが、何よりも今回のキャストの顔ぶれが岩井のフィルモグラフィを包括して圧巻である。 『四月物語』の松たか子、『Love Letter』の中山美穂、『undo』『Love Letter』のみならず深夜ドラマ時代からの豊川悦司、さらには『Love Letter』『PiCNiC』『スワロウテイル』の鈴木慶一、そして岩井俊二主演映画『式日』を撮った庵野秀明までもが召喚された本作は、その存在自体が、過去すべての岩井作品への「返信」であるかのようにも思える。 なぜなら、かつて別の作品で別な人物として存在していた演者たちが、新しい人物として、最新の「夏休み」に出現することは、「死者」の帰還や、「届くはずのない相手に届く手紙」に、とてもよく似ているからである。 ブリリアントなフォルムで、ダークな秘密をも抱擁する『ラストレター』(それは映画であると同時に、小説であり、さらにまっさらな意味での手紙でもあるだろう)の読後感があくまでもさわやかなのは、だから、なのかもしれない。

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